【愛知県田原市】第368回海の環境を学ぶ会~秋の磯観察会レポート|49名参加で19種類の海の生き物を発見
秋晴れの下、市内外から49名が参加
9月28日(日)、愛知県田原市の宇津江港公園奥の磯にて、本年度第6回目となる海の環境を学ぶ会~磯の観察会を開催しました。一週間前の天気予報では雨の予報が出ていましたが、当日は見事な秋晴れとなり、子ども32人、大人17人の計49人が参加し、渥美半島の豊かな磯の生態系を体験しました。
今回は市外からも多くの参加があり、名古屋市、豊田市、犬山市、蒲郡市などから足を運んでいただきました。参加者の中には小学1年生と4年生が多く、初めて磯の観察会に参加する子どもたちの期待に満ちた表情が印象的でした。秋の日差しの下、ひんやりとした心地よい海水の中で、参加者の皆さんは磯の生き物たちとの出会いを存分に楽しんでいただけました。

活動の流れと環境への配慮
受付と大きなゴミの回収
14時の開始に合わせて受付を行いました。今回は細かいゴミがほとんどなかったため、クリーンアップ活動は実施しませんでしたが、大きなゴミとしてプラスチック製のボード台が流れ着いているのを発見しました。参加者のお父さんたちが協力して取り出してくださり、海の環境を守ることの大切さを、活動の最初に実感してもらうことができました。こうした環境保全活動は、子どもたちに海の現状を知ってもらう貴重な機会となっています。

磯での生き物観察スタート
その後、岩場での安全な移動方法や生き物の見つけ方について説明し、いよいよ観察活動の開始です。秋の日差しの下、海水はひんやりとして心地よく、夏に比べると潮の引きは控えめでしたが、十分に観察できる環境が整っていました。初めて参加する子どもたちも、スタッフや保護者のサポートを受けながら、タイドプールを覗き込んだり、動石をめくったりして、次々と生き物を発見していきました。


子どもたちの生き生きとした姿
活動中、「俺岩どかすで、網頼んだ!!」と、出身地も違う三人の子どもたちが自然と協力し合う姿が見られました。生き物を捕まえた後には自己紹介もしていて、一緒に生き物を捕まえたことで絆ができたのでしょう。初めて会った子どもたち同士が、海という自然の中でチームワークを発揮する様子は、この観察会ならではの光景でした。
また、「俺これ以上いかないから!ここに魚いるから!!ちょっとみてて!!」と、濡れたくないお母さんとの攻防を繰り広げる子どもの姿も微笑ましかったです。そして、活動終了が近づくと「あと何分で終わってしまいますか??」とスタッフに尋ね、「あと10分くらいだね」と教えてあげると、「まずい早く見つけるぞ!!」と真剣な表情で生き物探しに熱中する子どもたち。時間を忘れて夢中になる姿が印象的でした。
秋の磯で出会った多様な海の生き物たち
今回の観察会では、19種類以上の多種多様な磯の生き物を観察することができました。秋の磯ならではの透明度の高い海水の中で、参加者の皆さんは様々な発見を楽しみました。
魚類とカニ・エビの仲間たち
魚類ではアゴハゼ、ドロメ、ミミズハゼ、カゴカキダイの幼魚など、磯を代表するハゼの仲間を中心に観察できました。カニ類ではイソガニ、ヒライソガニ、カクベンケイガニなど、様々な種類のカニが見つかりました。エビ・その他甲殻類ではスジエビモドキ、ヨコエビの仲間、ユビナガホンヤドカリ、フナムシなどが観察されました。

多様な貝類と謎の緑色生物
貝類ではアサリ、イシダタミガイ、スガイ、タマビキガイ、イボニシ、ケハダヒザラガイ、ヒザラガイ、マツバガイなど、多様な貝類を発見できました。今回特に注目を集めたのが、緑色の謎の生物。講師の松野さん(BlueDrop)に確認してもらったところ、ウミナメクジではないかということでした。


松野さんによる詳しい生き物解説
観察活動の最後には、参加者が発見した生き物を使って、BlueDropの松野さんによる詳しい解説が行われました。子どもたちは自分が見つけた生き物が紹介されると、誇らしげな表情を見せていました。

カニの見分け方を学ぶ
イソガニとカクベンケイガニの違いを実物を見ながら学びました。イソガニは完全に水がかぶるような磯に生息し、四角い形をしています。一方、カクベンケイガニは甲羅が正方形で、少し角が尖がった形をしています。こちらは水場ではなく、茂ったところや陸でも生活できる種類です。普段は水がなくても生活できますが、脱皮の時には水が必要なので水場で生活するという興味深い習性も教えてもらいました。
ヤドカリの恋のシーズン
今回発見された茶色っぽい透明なヤドカリ。実は今がヤドカリたちの恋のシーズンなのだそうです。「オスがメスの貝殻を掴んで連れ回す習性があります」と松野さん。メスが卵を持つまでずっと連れ回して、自分のメスを抱え込むのだとか。秋の観察会では、そういった行動をしているオスを見つけることができるかもしれません。

環境適応力の高いハゼの仲間
今回たくさん見つかったミミズハゼとアゴハゼ。これらは磯にいる代表的なハゼで、環境適応力が非常に高い魚です。「潮溜まりが浅くて、手を入れた時にお湯のような温度でも生きていけます」と松野さん。冷たくても熱くても、波が激しいところでも生息できる、耐性の強いハゼなのだそうです。一方、ニョロニョロした形のドロメは、川と海が混ざる汽水域にいる生き物で、成長すると大きくなって模様も変わるという特徴があります。

横向きに泳ぐヨコエビと海のお掃除屋さんたち
今回観察されたヨコエビの仲間。名前の通り、横向きになって泳ぐ不思議な生き物です。脚を使ってジャンプもできるのだとか。魚たちの餌になる重要な種類だと教えてもらいました。また、フナムシやイボニシは「海のお掃除屋さん」として知られ、海の環境を守る重要な役割を果たしています。

貝殻っぽくない貝の仲間と潮位の指標
参加者を驚かせたのが、ケハダヒザラガイ。見た目は貝殻っぽくないのですが、実は貝の仲間です。硬い部分が貝殻で、8枚の貝殻の板が必ずあるという特徴を、実物を見ながら確認しました。また、タマキビは海の近くに住んでいるのに海水が嫌いという不思議な生き物。「ブロックなどがあるところでラインを作って生息しています」と松野さん。水が来ない、ちょうど潮位のギリギリのラインに生息するため、タマキビがいる場所を見ると、そこまでは水が上がってこないことが分かるという、自然の指標としての役割も教えてもらいました。

発見された骨から学ぶ海の生き物
今回の観察会では、様々な生き物の骨も発見されました。魚の骨や尻尾の骨に加え、スナメリの背骨も見つかりました。空洞の部分に神経が通っているという構造を、実物を見ながら学ぶことができました。また、エイの毒針も発見されました。普通の魚と違い、返しがついている毒針で、刺されるとなかなか抜けなくなるそうです。網にもなかなか取れない厄介なものだと、注意喚起も兼ねて説明していただきました。
秋の磯ならではの特徴と魅力
松野さんからは、この時期の磯の特徴についても解説がありました。「季節的には、プランクトンが少なくなってきて透明度が上がってくる時期です。水中を見やすくなり、魚もサイズアップしてくるので捕まえられる種類は少なくなるシーズンですが、透明度が上がってくるので魚がたくさん見えるようになります。海藻が好きな魚などはこれから大きくなったりします」秋の磯には秋の良さがあり、この時期ならではの観察の楽しみ方があることを教えていただきました。

参加者の声と子どもたちの成長
活動後、参加者からは「楽しい。来てよかった」という子どもたちの声が多く聞かれました。初めて磯の生き物に触れた子どもたちが、目を輝かせながら生き物を観察する姿が印象的でした。保護者の方からは「普段見られない子どもの生き生きとした表情が見られました」という感想をいただきました。子どもたちが自然の中で夢中になって生き物を探す姿は、普段の生活ではなかなか見られない特別なものだったようです。
「磯の場に活発に生きる生き物たちが見つけられるのが、この磯の観察会の面白いところ」という松野さんの言葉通り、今回も多種多様な生き物との出会いがありました。こうした体験を通じて、子どもたちが海の豊かさを実感し、「きれいな海を守る心」を育んでくれることを願っています。
渥美半島の豊かな海を未来へ
一週間前は雨の予報で心配しましたが、当日は見事な秋晴れに恵まれ、充実した観察会となりました。宇津江港公園奥の磯は、多様な海の生き物が観察できる貴重な場所です。こうした環境教育活動を通じて、次世代を担う子どもたちに海の素晴らしさと環境保全の大切さを伝え続けていくことが、私たち亀の子隊の使命です。
今回も講師としてご指導いただいたBlueDropの松野さん、市外からも多くお越しいただいた参加者の皆様、そして活動を支えてくださったスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。海の環境を学ぶ会では、これからも子どもたちが海の素晴らしさを体験し、環境保全の大切さを学べる活動を続けてまいります。
活動実績
- 参加者数:49名(大人17名・子ども32名)
- 観察した生物:19種類以上
- 活動時間:約2時間
- 活動場所:愛知県田原市 宇津江港公園奥の磯
- 講師:松野さん(BlueDrop)
